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2022.7.9
「よりよい大学生活を送るための学生によるワークショップ~ハラスメントが起きたら学生に何ができるか~」 開催

 

1.開催目的・概要

7月9日(土)に東北大学構内にて「よりよい大学生活を送るための学生によるワークショップ~ハラスメントが起きたら学生に何ができるか~」を行いました。企画の目的は、このワークショップは東北大生をはじめとする大学生・大学院生を対象としており、大学のハラスメント問題について考えるきっかけづくりです。企画では、EquAllが昨年から今年にかけて実施した東北大学工学研究科院生対象のハラスメント実態調査アンケ―トの結果報告や、元東北大学特任助教の方の講演があった上で、参加者同士でディスカッションを行いました。

 

2.状況・参加者からの反応

◆参加者数

・現地:6名

・オンライン:4名

 

◆当日の様子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆企画の状況

元東北大学特任助教の方からのお話では、自身がハラスメント被害を受けた時の心境や、どうして大学に対して申し立てをして闘おうと思ったのかお話いただきました。また、学生がこういった問題に関心をもって取り組むことの意義について話していただきました。その後のディスカッションでは、①日頃の悩みや不安・違和感・問題意識、②企画の感想・意見、③『大学のハラスメント問題は体質的・構造的問題であり、学生の悩みも学生の無権利状態という中で共通した悩みとしてある』という見解に対する受け止め、④社会や当事者から見た学生の価値や学生同士の団結の必要性について、意見交換しました。参加者からは当事者の方のお話を受けて、「人権とか人の生存権が守られていない」「せっかくしたいと思って大学に入ってできないのは凄く苦しかったと思う」といった当事者を心配する声や、転じて東北大学で起こっているハラスメントの多さを悲惨に思う声が挙がりました。『大学のハラスメント問題は体質的・構造的問題である』という見解についてはおおよそ同意され、「労働者には、労働組合があってハラスメントに対して闘えるけど、学生に対するものはない」「組織の言ったことにおかしいって思っても言えない状況」等の意見が挙がりました。『学生の価値や学生同士の団結の必要性』については、「団結して声をあげることは(当事者にとって)安心することにも繋がる」「弱い人の立場に立って、自分ができることを考えることが大事」といったように、当事者の立場に立った見解が述べられていました。

 

 

◆参加者からの感想

企画後アンケ―トに回答いただいた方の声を掲載いたします。

企画の中で印象に残った点として、最も多かったのが「ハラスメント当事者からのメッセージ」、次いで「東北大学における度重なるハラスメント問題について」、「ディスカッション」でした。

◎「ハラスメント当事者からのメッセージ」が印象に残った理由

・理不尽な扱いを受けた事を聞いて心が傷んだから

・断じて許してはいけないから

・人権侵害や生存権が守られていないから

・当事者の言葉一つ一つから苦しみや辛さを感じたから

・生々しくリアルだったから                etc.

 

◎「東北大学における度重なるハラスメント問題について」が印象に残った理由

・大学の諸機関の機能不全性の実態に驚いたから

・大学の対応に全く誠意を感じられなかったから              etc.

 

◎「ディスカッション」が印象に残った理由

・ハラスメントに対する行動の仕方について考えを深めることができたから

・他の人の意見も聞けたから                                                                  etc.

 

◎企画全体を通じての感想

・ハラスメントには関係ないという姿勢ではなくて自分も当事者になるかもしれないと意識しないといけない

・被害者個人ではどうにも出来ないことでも学生の真っ直ぐな想いが問題解決の原動力になると思った

・団結していくことが非常に重要だと感じた

・大学の問題が社会の目に触れることになればこれまで密室だった場所に目が向けられる事で問題が起きづらい環境を作れると思った         etc.

 

《アンケ―トにご協力いただきありがとうございました。》

 

3.企画の総評

今回のワークショップでは10名の東北大学生と、数名の取材の方に参加していただきました。来場していただいた理由として、ハラスメントへの問題意識を持っている方、または自身の関心のある分野であるからと言う理由が多くありました。ハラスメントについての世論が学内においても少しずつ広まりつつあることが感じられます。同時に同じ学生同士で問題について話し合う機会を求めていることも感じます。

企画では全体として、東北大学のハラスメントが起こる構造、大学の対応の不誠実さについての意見があがっており、特に当事者の意見を聞いて衝撃を受けたという人が多い印象を受けます。そして、今回の企画をきっかけに参加された学生は問題についての理解が深まったと同時に、自らも主体的に発信することや取り組みに動いていく声も多くあがっています。この点からしても、今回の企画の目的は一定達成していると言えます。

一方で、参加者が学生全体に比較してまだ少なく、より広く学生に呼びかけ、世論を波及させていくことが今後の課題です。

 

4.今後の取り組み

EquAllでは東北大学内においてハラスメントをなくし、大学の研究・就労環境の改善を求めて活動をしています。大学の環境改善を行っていくためにも、特に学内の学生を中心として世論を作り、民主的な大学環境の実現に向けて立ち上がっていくことが重要であると考えています。そこで今後は、サークルや部活動を回る啓蒙活動を通じて、学内の世論づくりを行っていきます。また、学内の学生の中では元々社会問題に関心のある学生や大学の在り方に関心のある学生など、問題意識をもった学生は存在しますが、そうした学生の関心、問題意識を結集する組織は学内にありません。そこで、そのような学生や、啓蒙活動を通じて結びついた学生を集めた運動体を作り、相互の情報交換、幅広い啓蒙活動、学生の意見をまとめた要望書の大学への提出などの取り組みを行い、学生の立ち上がりを生かした活動を展開していきます。

​2021.11〜2022.1
東北大学大学院工学研究科生対象
ハラスメント実態調査アンケート 

↓河北新報様に取り上げて頂きました!

​I.調査概要

■調査の目的

東北大学において過去から現在にいたるまで様々なハラスメント問題が起こっていますが、ハラスメントの実態や学生の認識に焦点を当てた調査は行われていませんでした。そこでEquAllは、学内の研究・就労環境改善を目指すうえで、東北大におけるハラスメントの実態を把握するとともに教職員や学生へ世論を波及させることを目的としてアンケート調査を実施しました。

 

■調査期間

 令和3年11月~令和4年1月

■調査対象

 東北大学大学院生 工学研究科

■調査方法

Google Formsと紙面の併用

■回答数

 67件

■調査項目

1.大学内におけるハラスメントに関する質問

2.過去に東北大学内で起きたハラスメントに関する質問

3.大学内におけるハラスメント対策機関に関する質問

4.大学内における研究環境の改善に関する質問

■調査結果の信頼性について

今回のアンケートでは、調査における不十分さのため、調査としての信頼性が担保されておりません。 具体的な理由としては以下になります。
①調査サンプルの偏り

本調査では、研究科内の各研究室を訪問して、研究室の担当者を通じて調査へのご協力を依頼してお りました。そして、研究室を訪問する際に労力を考えた結果、専攻ごとに赴き、その専攻の研究室を順番 に訪問する形をとりました。本来はサンプルの偏りがなく、十分なサンプル数を集めるためには全ての 専攻の研究室を満遍なく赴き、調査の依頼とアンケートの回収を行うべきですが、当初の計画から調査 に多大な労力が生じ、現時点で工学研究科内のすべての研究室への調査依頼を行えておりませんでした。 さらに、調査過程で各専攻を満遍なく調査できるように研究室を訪問するのではなく、次から次へと研 究棟内で隣り合う研究室を訪問していたため、所属する専攻や分野などで類似性のある研究室に調査の 依頼が集中し、回答の傾向にも偏りが生じました。具体的には、工学研究科内 18 専攻中、航空宇宙工学 専攻、電子工学専攻、通信工学専攻、土木工学専攻では専攻内の約 60%の研究室に訪問した一方、機械 機能創成専攻、ファインメカニクス専攻、ロボティクス専攻、量子エネルギー工学専攻、応用物理学専攻、 都市・建築学専攻、知能デバイス材料学専攻では、訪問した研究室の割合が 20%以下となりました。そ の結果、得られた回答データに偏りが生じました。

②母数に対する回答数の小ささ
今回の調査で訪問した研究室は 89 研究室で、得られた回答数は 67 件でした。これは工学研究科の定

員が 2023 名、研究室が 278 研究室(事前調査による)であることと比較すると、訪問した研究室の割合 は工学研究科内の約 32%である一方で、得られた回答数は工学研究科の定員のうち約 3%になり、かな り小さいサンプルサイズになりました。得られた回答数が小さくなった理由として、以下のことが考えられます。

i)先に述べたような全ての研究室への調査依頼ができていないこと。

ii)調査への協力を頂いた研究室において、対応してくださった担当者を介し、研究室内のミーティン グやメールなどを通じて院生に周知していただくため、周知に不均等が生じて研究室内の院生全員に 十分に周知されなかった可能性があること。

iii)研究室を訪問し調査協力の依頼をした際、EquAll が学内登録団体でなく団体としての信頼性が低 いことや研究室内に学生がいないことを理由に、一部の研究室から協力拒否があったこと。 調査結果の信頼性が不十分でないため、今回の調査結果や分析は工学研究科全体へと一般化すること

はできず、得られた回答データ内での分析にとどまります。その点をご了承ください。 今回の調査で生じた課題を総括し、今後の調査では、サンプリング手法の変更、調査計画を成し得る体

制の構築、アンケート配布への協力の呼びかけなどを行い、改善して参ります。

II.調査結果

■調査結果の概要

アンケート結果より、東北大学においてパワハラ、セクハラといったハラスメントが多く起こっている現状が分かりました。学生の認識としてそうした現状を薄々感じており、よくないと思っている反面、黙認するか、しょうがないとも思っていることも分かりました。ハラスメント窓口も知られていない、もしくは知っていても学生にとって行きにくいものであるなどの現状から、十分に機能していないことも分かりました。

■調査結果の詳細

回答者の属性

・所属(研究科、専攻等)(任意回答)

・学年

・性別

1.大学内におけるハラスメントに関する質問

問1-1. あなたは実際にハラスメントを受けたことはありますか?

問1-2. あなたは他者がハラスメントを受けている場面を見たことはありますか?

問1-3. あなたは自分の周囲の人がハラスメントを受けたと聞いたことはありますか?

2.過去に東北大学内で起きたハラスメントに関する質問

問2-1. あなたは大学内で、メディアで取り上げられるほどのハラスメント事件が数々起こっていることを知っていましたか?

問2-2. (2-1で「知っていた」と答えた方に)どこでそのことを知りましたか?

問2-3. このように過去から現在に至るまで、学内ではハラスメントが複数起こっています。これに対してあなたはどのように思っていますか?

3.大学内におけるハラスメント対策機関に関する質問

問3-1. あなたは大学内にハラスメント相談窓口(ハラスメント全学相談窓口、各キャンパス部局窓口)があることを知っていましたか?

問3-2. あなたは実際に学内の窓口に相談したことはありますか?

問3-3.〜問3-7はアンケートの匿名性を守るため掲載を控えさせていただきます.

問3-8. どのような相談窓口が学内に必要だと思いますか。(自由記述)

<回答例>

・オンラインでも相談できる窓口。

・相談のみの対応は意味ありません。当事者の大学教員に警告、公表しないと変わりません。

・学生、職員を問わず気軽に相談できる窓口が必要だと思う。

・大学の教員が関わっていない、第三者が運営する窓口。

・外部委託の相談窓口。

4.大学内における研究環境の改善に関する質問 

問4-1. 学内でハラスメントが起きるのを防ぐためには何が必要であると思いますか?(複数回答可)

問4-2. 問4-1のように回答した理由をお書きください。(任意回答)

<回答例>

・学生側は対策をとれるほどハラスメントの情報や法律に精通していないから。

・強力な罰がないと、状況が変わりません。

・教授の権力が強く、また研究室が閉じた世界であるため独裁状態になるため。

・大学側がハラスメント対策をしてしまうと、大学内の都合により丸められる可能性があるため。また、制裁を強力にすると、より陰湿なハラスメントに発展しかねないため。

・特に教授などの立場が上の方がハラスメントをした場合、大学側は学生を守ってくれないと感じる事例を見聞きした。立場によらず、きちんと処罰もしくはハラスメント防止のための教育をしていただきたい。

問4-3. 学内でのハラスメント発生時における、ハラスメントの審議機関(ハラスメント調査委員会等)のあり方として必要な条件は何だと思いますか?(複数回答可)

問4-4. 問4-3のように回答した理由をお書きください。(任意回答)

<回答例>

・知り合いだと、相談のみになりそうです。相談後、逆にもっと激しいハラスメントを受ける可能性が高い。

・公正な判断を行うため。

・研究室ごとにクローズな環境が形成されがちなので,第3者の目線を入れないで研究室のみで相談しても考えにバイアスがかかる可能性がある.

問4-5. 学内にハラスメントが起きたときの対応として何が必要であると思いますか?(複数回答可)

問4-6. 問4-5のように回答した理由をお書きください。(任意回答)

<回答例>

・強い罰が必要

・加害者は今の社会のあり方を知るべきだ。昔は灰皿投げたり、おしりさわったりする教授がいて、それを見ていた人が今の教授。

・加害者はもう学生を指導する資格がない

III.全体を受けて

 

今回のアンケートを通じて、東北大学内においてハラスメントが潜在的に起こっている可能性がある こと、また学生の中でも改善を求める声が様々に挙がっていることがわかりました。結果を通じた考察 として、以下の 4 点に集約されます。

(1) 大学内でハラスメントが数多く起こっている。

今回得られた 67 件の回答のうちハラスメントを受けたことがあるのは 8 件にのぼり、東北大学にお けるハラスメントは深刻な問題であることが分かります。特に研究室において、教員から学生に対して のハラスメント被害が非常に多かったです。加害者側は立場上の優位性を背景にハラスメントを行って いることが推察できます。また、男性より女性の方がハラスメントを受けたことがある人の割合が高く なっています。具体をみると、男性が受けたハラスメントはアカハラに分類されるものであるのに対 し、女性の場合セクハラやジェンダーハラスメントに該当するものも見られました。

(2) 学内相談窓口をはじめ、学内ハラスメント対策機関が十分に機能していない。

大問 3 や大問 4 の結果より、相談窓口やハラスメント審議機関は原則的に学内の教職員のみで構成さ れていること、加害者への厳罰が十分でないことなどにより、学内ハラスメント対策機関が学生にとっ ての相談先として不十分であることが示唆されます。また、大学が行っている取り組みの一つに教職員 を対象としたハラスメント講習がありますが、アンケ―ト結果ではそういった講習が行われていないか らハラスメントが起きるのではないかという意見も寄せられています。既存の対策が実際にハラスメン ト抑制に役立っているのかを、精査する必要があるでしょう。

(3) 大学内でハラスメントが数多く起こることは学生に不安な感情をもたらしている。

過去から現在に至るまでハラスメントが多く起こり、さらに相談先がない中で、多くの学生にとって 不安や恐怖を感じながら大学生活を送っていることが結果から伺えます。問 2-3 より学内で起きるハ ラスメント事件に「あまり関心がない」と答える割合は低く、多かれ少なかれ関心があるにも関わら ず、問 2-1 よりハラスメント事件を知っていた人の割合は半分以下になっています。さらに、そうい った事件は大抵知人・友人から伝え聞いたり、SNS を通して知っているのが現状です。研究室というク ローズドな環境では、ハラスメントそのものが見えにくくなっていることも、学生が恐怖に感じる要因 だと考えられます。

 

(4) ハラスメントが数多く起こる学内環境の改善を多くの学生から求められている。

大問 2 や大問 4 から、多くの学生が問題意識を持っており、学内環境の改善を求めていることがわか ります。特に、ハラスメントに関する情報開示、ハラスメント調査・審議機関の第三者性、加害者への 厳罰と被害者の救済措置が求められています。現在のハラスメント対策へ学生自身疑問を持っていることがうかがえます。

​2021.12.5
第3回東北大学におけるハラスメントシンポジウム 

 12月5日(日)に日立システムズホール3FエッグホールにてEquAll主催の第3回シンポジウムを行いました!
本シンポジウムは、筑波大学と東北大学の事例から、背景にある普遍的な大学の権力構造を明らかにし、問題解決のためにどのような取り組みが求められているのかを深める中で、世論形成や支援の動きを作ることを目的として行いました。
第1部では「学長選考問題と背景にある日本の大学の構造」をテーマに、筑波大学吉原ゆかり氏から、学長選考問題を中心に筑波大学における問題、さらに背景にある日本の大学の問題の構造まで切り込んで講演をして頂きました。講演では初めに学長選考問題のきっかけである、①学長任期制限の撤廃、②学内教職員による学長選考の意向投票の廃止の2点について具体的に述べられました。これらは学内の教職員からの意見集約はなされず、大学上層部にあたる組織でのみ決められる民主的とは呼べない決裁の方法であり、かつ、これらの改正が行われることで学長選考会議(人員は最終的に学長による任命)の独断で学長を選ぶことが可能になり、現学長が永久に学長の座に就くことも可能となってしまいます。さらに、筑波大学では防衛装備庁による競争的研究資金に応募し、採択されるなど、これまで否定してきた軍事研究を大学として行おうとしている問題も連関して話されました。そして、プライバシーが十分に担保されていない意見投票制、大学の意向にそぐわない情報を封じるために策定したと感じられるガイドラインなど学内関係者からの意見が自由に述べられない環境も構築されています。学長選考は大学の今後を決める重要な事案であり、本来は学内教職員、学生含めた学内関係者による民主的な議論が必要であるが封じられている現状があることも述べられました。このような問題、環境の中で学内関係者による意見聴取では対抗候補が多数の支持を集めたのにも関わらず、学長選考会議において現職の再任が決定されました。吉原氏によると、学長の独裁化、軍事研究の導入などの筑波大学で起きている問題は日本の大学の構造的支配の一端であり、全国の大学の中におけるパイロットケースであると意見を述べられました。権力による分断支配に対抗していくためにも、「大学における主体は誰か?」について考えていく必要があるという意見も述べられました。
第2部では、「大学での問題の背景と取り組みの方向」をテーマに、吉原ゆかり氏、東北大学男性特任助教、EquAll代表で学生の川村松吉の3者によるディスカッションを行いました。
各々の立場から意見が述べられる中で、大学における問題の背景にある、上位役職者が若手研究者を自らの立身出世の道具として使い潰すという大学の構造には、国立大学法人化が影響していること、さらに大学の中央集権化が進み、決定機関である執行部は政府、文科省、財界の意向を反映するようになり、大学として利潤追求のために軍事研究・産学共同の強化、任期付き研究職の拡大等が進められていることが示されました。  
また、教職員・学生の自治機能が失われ、上位役職者が弱い立場の研究者や学生にハラスメントをしても何の不利益もなく、むしろ自分に都合の悪い者を追い出して役職を高めていっています。そして、本来社会の発展のためにあるべき学問研究は、立身出世、利潤追求の道具として使われてしまっているという意見も出されました。この構造的な問題に対して、必要なのは力関係をひっくり返し、教職員・学生自治を実現していくことです。議論の最後には研究者、教職員、学生が協力し、大学を超えた連帯を作りだし、権力に対して数の力で立ち向かっていくことが大事であることがそれぞれの立場から表明されました。
 今回のシンポジウムは、参加者が69名と非常に多くの方にご参加いただきました。また、東北大学をはじめとして、北は山形・宮城、南は京都まで様々な地域の大学の学生・教職員、ハラスメント関連団体、マスコミ、労働組合、市民活動家など広範な層の方々にご参加いただきました。回を重ねるごとに参加される地域や規模も拡大し、社会的世論が着実に広まるとともに企画の内容にも深みが増していることが実感できます。これもひとえに参加いただいた皆様のおかげです。また、今回は特に大学関係者の参加が多く、学内においてハラスメントや学長選考問題等の種々の問題について少しでも関心を持ち、変えていこうとする原動力を感じました。
参加者からは、登壇した特任助教の先生への称賛の声や、大学における問題の構造的共通性に気づいたという声、団結の必要性を感じたという声が多数挙がりました。このように、被害者自身が問題を見つめ、第二の被害者を出さないように団結して取り組むことが、どれだけ多くの人に勇気や希望を与えるのかが非常によく分かります。また、学生自身もただ授業で学ぶだけではなく、当事者の立場に立って問題に向き合い、果敢に行動に移していくことが社会を動かす力になるのだと分かります。今こそ、学生や研究者一人一人が何のために学問を学ぶのかを考え、社会から見た学生・研究者存在の矜持を生かすために団結していく、その真価が問われている時でしょう。問題を知ったところから、まずは一歩踏み出すことが問題の渦中で苦しむ当事者を救うことにつながります。
 今後は、さらに社会的世論を拡大していくため、継続的なシンポジウムの開催に加え、マスコミにもご協力いただき新聞やニュース等でも発信していく予定です。また、学内においては、現在、東北大学の大学院生を対象にしたハラスメント実態調査アンケートを工学研究科から行っております。現在は調査を一旦中断し、結果を取りまとめております。結果は4月を目途に公表を行う予定で、その後、工学研究科以外の研究科へもアンケート調査を行い、より学生からの意見を聞き、意見を基に大学への具体的要求に繋げていきます。また、学生からのハラスメントの相談も受けており、ハラスメント被害者の問題解決に向けて取り組んでいきます。

 

 

シンポジウムの様子(吉原ゆかり准教授).png
シンポジウムの様子(EquAllメンバー).png

シンポジウムの様子(吉原准教授)

シンポジウムの様子(EquAllメンバー)

​2021.9.26
第2回東北大学におけるハラスメントシンポジウム 

無題のプレゼンテーション (1).png
無題のプレゼンテーション.png

 9月26日(日)にせんだいメディアテーク7FスタジオシアターにてEquAll主催の第2回シンポジウムを開催しました!

 今回のシンポジウムは、過去にハラスメントの被害を受けて自死された東北大学准教授の遺族である前川珠子氏に講演を行っていただくことを通して、東北大学において過去から現在まで連綿とハラスメントが続いていることを解き明かし、前回のシンポジウムに引き続き、その背景にある大学の権力構造に触れました。そこから本来あるべき研究・就労環境について、さらにそこに向けてどのような取り組みについて議論していく中で、今後の支援の動きを作っていくことを目的として行いました。

 第1部では前川珠子氏から「ハラスメントとその背景にあるもの」と題し、①社会一般に存在する労災の現状、②夫・前川英己准教授が受けたハラスメントの経緯、③前川珠子氏自身の取り組みについてのご講演がありました。講演の中で、現在労災申請は非常に増えていること、その原因は精神疾患によるものが多いこと、当事者は裁量労働制が適用されやすい専門職や管理職に多い一方で労災認定件数は横ばい状態であり、非常に少ないことが示されました。その背景として、大学では近年、国からの運営交付金が減少しており、そのしわ寄せが人件費にダイレクトに影響し、大学は経営資金の獲得のため、産業界に資する研究を「使える」研究とし、それ以外の研究を「使えない」研究として切り捨てていく構造的問題であるということが表明されました。さらに過去のハラスメント被害者である前川淳教授が受けたハラスメントの経緯にも触れられました。

 前川准教授は、先端材料研究という社会からの期待が高まっていた研究分野であったため、外部から研究資金を多く得ていました。研究資金の申請など膨大な事務作業に追われながら学生の指導も行い、日々孤軍奮闘していたため、学生からの信頼も厚い教授でした。前川准教授は東北大学において元々新A棟に独自の前川研究室を配置できる予定がありました。にもかかわらず、系長の指示によって正規の入居手続きを経ていない長坂研究室が後になって新A棟に配置され、前川研究室は追い出される形になりました。また、実験場所を元々使用予定だったマテリアル系キューブ棟から、取り壊しが決まっているTEBERO棟に移るように指示された上、系長から口頭で東北大学からの追放を宣言されました。前川准教授は系長から、一方的に研究室への入居を認められず、実験室も与えられず、東北大学からの追放宣言を受けることで精神的に追い詰められました。その過程で、長坂氏をはじめとする他の金属研究の大学職員らはそれら状況を傍観し、むしろNMR実験の妨害など、研究室の損得勘定を優先した結果として系長に加担していきました。これは、当時学閥として権力を持っていた金属研究者から先端材料研究者に対する集団いじめだと言えます。

 第2部では、前川珠子氏、ハラスメント被害者の特任助教、学生1人で「ハラスメントを無くすにはどうすればよいか」というテーマでディスカッションを行いました。ここでの論点は以下の3点です。

(1)前川珠子氏のご講演に対する感想や受け止め

(2)大学に求められる価値

(3)労災やハラスメントのない研究・就労環境を作るには

 議論の中では、結果的に先端材料研究の前川准教授を新A棟から追い出すことになった金属研究の長坂氏が、現在特任助教に対してハラスメントをしている加害者でもあり、過去から現在まで東北大学においてハラスメント体質が温存されていることが明らかになりました。また、現在副学長である長坂氏に対して、前川准教授は強い学閥を持っていた金属研究と対立する中で大学からの追放宣言を受け、特任助教は任期付きという立場でありながら契約と異なる業務への異議申し立てをしたことに対してハラスメントを受けました。つまり東北大学におけるハラスメントは、上位役職者が力の弱い研究者を使い潰すという権力構造の中での共通した問題であることが明らかになりました。そこで、これから大学に求められる価値として、大学教職員・学生が対等に意見を交わし合うことができ、健康に研究・就労できる環境を作ることが、創造性豊かな人を育てることや、学問を社会に還元することにつながるという議論になりました。

 今回のシンポジウムには現地参加・オンライン参加合わせて65名程のご参加がありました。参加された方々の中には第一回に引き続きご参加いただいた方もおり、そして参加者の層としても東北大学の学生や教職員の方々から他の大学の学生や教職員、一般市民の方々と幅広い印象です。企画を重ねていく中で、大学内においても、また、広く全国的にも少しずつ世論が広がってきているといえるでしょう。参加された方の意見からは大学の就労・研究環境の改善に対する主体的に受け止めが見られ、ハラスメントについて、さらに大学の研究・就労環境改善についての世論は少しずつ進んできているといえます。今後は継続したシンポジウムの開催やSNSなどでの発信を通じて、一層世論を拡大していくことが求められています。

 今後の取り組みとしては、継続的な世論形成だけでなく、大学の環境改善に向けて、具体的な取り組みを始めていきます。まずは、10月から11月にかけて、大学内の院生を中心にしたアンケートを実施し、学内におけるハラスメントに対する問題意識などの調査を行います。その後、アンケートの結果も分析し、大学に対する改善要求を行っていきます。改善要求の項目としては現時点では、特任助教の方を含めたハラスメント被害者の救済措置の明確化やハラスメント対策委員会に学外の方を入れるなどのハラスメントにおける規程の改正などを考えています。

 さらに学内のみならず、他大学で活動しているハラスメント防止団体や学生とも連携を作り、研究・就労環境の改善に向けた全国的な運動の形成に向けても一層、取り組んで参ります。

 

 

シンポジウムの様子(全景)

ディスカッションの様子(EquAllメンバー)

​2021.8.22
第1回東北大学におけるハラスメントシンポジウム 

 8月22日(日)に市民活動サポートセンターB1F市民活動シアターにてEquAll主催の第1回シンポジウムを行いました!

本シンポジウムは、現在進行形のハラスメント被害者である男性特任助教から東北大学で立て続けに起こるハラスメントの真相を暴露し、その背景にある権力構造まで遡ることで、学生・教職員の共通した現在進行形の問題として、世論の拡大や支援の動きを作り出すことを目的として行いました。

 第1部で、まず被害者からハラスメントの経緯について話していただき、次に被害者の担当弁護士から要点について整理しながら、法的にハラスメントにあたる根拠を話してもらいました。これにより、次の3点の問題点が明らかになりました。

 ①契約と異なる業務の押し付け

 ②異議申し立てに対する退職強要のパワハラ

 ③指導の形式を借りた研究させないアカデミックハラスメント

 第2部で、被害者、担当弁護士、EquAllの学生2名でハラスメント の背景にある大学の権力構造について議論を深めていきました。ここでは、次の4点の論点について議論しました。

(1)ハラスメントする側の内心の洞察

(2)背景にある権力構造

(3)ハラスメントの状況下に置かれた被害者の心境

(4)支援者としての問題の受け止め

これにより、ハラスメントする側は、野心や立身出世欲が強く、そのような人物が副学長に昇進する傍らで、学生や特任助教のような若い研究者が切り捨てられていく構造上の問題であることが明らかになりました。特に、大学法人化は学内の中央集権化を助長し、産業界に資する学問を優遇する風潮を作り上げました。その権力構造下で、被害者はおかしいと声を上げれば退職強要を受け、契約違反が認められていざ研究をできるようになったかと思えば、研究レポートを受け取らないアカハラに遭い、恐怖や孤独を感じ、精神科に通院することになりました。これを受け、弁護士からは引き続き弁護をする中で被害者のキャリアを守っていくことや、学生からは自分たちの将来の問題として主体的に受け止め支援していくことが表明されました。

 本シンポジウムには、来場・オンライン合わせて80名程ご参加いただき、第1回シンポジウムとしては十分な人数が集まりました。参加者層としては、全国の大学の学部生、大学院生、大学教職員など大学関係者に多かった印象です。これは、全国的に、大学におけるハラスメントに対する問題意識が高まっているためでしょう。

そのような中で、本シンポジウムが開催され、参加者は被害者が受けたハラスメントの生々しさや、その背景にある大学の権力構造が特に印象に残っていたようです。参加者の中には、「憤りを感じました」「許せないです」と正義感を揺れ動かされる方が多数いました。また、一部の学生からは、「危機感を抱きました」「自分自身に(ハラスメントが)起きた時に同じように行動できるか考えされられました」といった声も聞かれ、今回の問題を被害者個人の問題ではなく、学生の将来の問題として主体的に受け止めたようでした。

 本シンポジウムを通して、ハラスメントに対する世論はより広まっていく方向に動いています。しかし、まだ大学に対する影響力はまだ十分でなく、今後はさらなる世論の拡大や、学内での具体的な運動が求められています。さらに、私達は現在、東北大学での問題に取り組んでおりますが、ハラスメントは全国のあらゆる大学でも存在しており、各大学における学生とも協力し、全国的な横の動きのもった運動が必要だと思っています。

 そのために、今後もEquAllは世論形成としてのシンポジウムなどの取り組みを行い、さらに、学内においては、学内アンケートの実施や署名活動、大学への申し入れなどの取り組みを行い、学内における研究・就労環境の改善のために取り組みます。そして、学内に限らず、他大学で活動しているハラスメント防止団体をはじめとして、他大学の学生とも連携を作り、全国的な研究・就労環境の改善を掲げた運動の形成に向けても取り組んで参ります。

シンポジウムの様子(全体).png
​シンポジウムの様子(全景)
ディスカッションの様子(EquAll).png
ディスカッションの様子(EquAllメンバー)
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